お肌のはなし ~ 幹細胞コスメ(幹細胞培養液コスメ)の正しい選び方 ~
幹細胞コスメ(幹細胞培養液コスメ)を選ぶ際の参考に、幹細胞コスメが美肌を維持するスキンケア作用はじめ、ヒト由来や植物由来などタイプ別による特性の違い、また他の美容成分(ヒアルロン酸やコラーゲンなど)との違いなどについて解説します。
幹細胞コスメと、ヒアルロン酸やコラーゲンなどのコスメとの違い
近年、幹細胞コスメが、エイジングケアなどで注目されていますが、従来のヒアルロン酸やコラーゲンなどの美容成分を含むエイジングケア美容液などと何が違うのでしょうか?
その違いは大きくわける次のようになります。ヒアルロン酸やコラーゲンなどの美容成分を含むコスメは、加齢に伴い肌から失われている成分を美容液などにより補うのに対し、幹細胞コスメは、肌細胞自身の働きに作用するという違いがあります。
〔ヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチンなどの美容成分を含むコスメ〕
加齢に伴い肌内から失われていく成分を補う
〔幹細胞コスメ〕
肌細胞自身の働きに作用する。(例:肌細胞自身に対し、ヒアルロン酸やコラーゲン、エラスチンなどの分泌を促す)
幹細胞とは
幹細胞とは、自身と全く同じ能力を持つ細胞を複製したり修復したりできる自己複製能力(自己複製能)と、自身とは全く異なる様々な細胞に分化できる能力(多分化能)を持つ細胞のことです。
このような性質を持つことから、火傷などによる大きな損傷の場合の皮膚移植や、眼球の角膜移植などの際の再生医療などで、幹細胞は利用されています。
幹細胞を再生医療の現場などで利用する際、幹細胞を採取し、その培養したものを使用します。
培養される際、幹細胞は有益な成分を培養液内に分泌します。この培養液には非常に有益な成分が残されているため、再生医療とは別に美容の成分として利用され「幹細胞培養液コスメ」として広く知られています。
「幹細胞コスメには、幹細胞成分が入っている。」という誤解
「幹細胞コスメには、幹細胞成分が入っている。」と誤解している人もいますが、実際に含まれているのは、幹細胞ではなく幹細胞順化培養液です。
一度、成分表の記載をチェックください。「幹細胞」ではなく「幹細胞順化培養液」となっていることが確認できます。「幹細胞順化培養液」とは、幹細胞を含んだ培養液という意味ではなく、培養後に幹細胞を取り除き、その後に残る培養液(培養上清液)のことであると正しく理解ください。
また「幹細胞コスメ」という表記は(幹細胞が含まれているという)誤解を招く恐れがあるということで、化粧品やその広告に使用することが日本化粧品工業連合会のガイドラインで禁じられており、正式な表記は「幹細胞培養液」もしくは「幹細胞上清液」となります。
(当ページの表記も、以降は「幹細胞培養液コスメ」といたします。)
幹細胞培養液に含まれる成分
幹細胞培養液には、培養時に幹細胞から分泌される様々な生理活性物質(サイトカイン)や成長因子(グロースファクター)が豊富に含まれています。これらの成分は、美肌の維持(特にエイジングケア)において非常に注目され、幹細胞培養液コスメとして広く利用されるようになってきました。
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生理活性物質(サイトカイン)
- 細胞から分泌される低分子のタンパク質の総称。細胞間相互作用に関与し周囲の細胞に影響を与えることがわかっています。
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成長因子(グロースファクター)
- 動物体内において、特定の細胞の増殖や分化を促進するタンパク質の総称。
例えば、TGFと呼ばれる成長因子は、コラーゲンやエラスチンを強化するとされています。
以上により、幹細胞培養液に豊富に含まれる様々な生理活性物質や成長因子が、スキンケアに期待できる成分であるであることがお分かりいただけたと思います。
それでは、それらが具体的にどのような作用をするのかについて見ていきましょう。
幹細胞培養液に含まれる生理活性物質や成長因子の肌への作用
肌は加齢とともに衰えてきますが、衰えの主な要因は、ターンオーバー(肌の代謝)が不活性になることと、コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸といった肌の潤いや弾力性を左右する成分の減少によるものです。幹細胞培養液に含まれる生理活性物質や成長因子は、これらの肌の衰えの要因に働きかけてくれます。
ターンオーバー(肌の代謝)の正常化への作用
ターンオーバーとは、簡単に言えば、肌の生まれ変わりのことです。肌の一番奥で生まれた肌細胞は、一定の期間を経て肌表面に押し上げられ、やがて垢として剥がれ落ち寿命を終えます。このサイクルがターンオーバーの周期であり、加齢とともにこの周期は長くなります。20代のころであればおよそ28日ですが、50代ではおよそ75日、60代ではおよそ100日にもなります。若い頃であれば、1か月も経たないうちに新しい肌へと生まれ変わっていたのが、年をとると2か月も3か月も経たないと新しい肌に生まれ変わってくれません。
こうした加齢の伴う衰えに対し、成長因子の1つであるEGF(上皮成長因子)はターンオーバーを促す働きを持つため、細胞を活性化させターンオーバーを正常化へと導いてくれます。
コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸など、加齢とともに失われる肌の潤いやハリ(肌の弾力性)を左右する成分の強化や増加のサポート
コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸など、肌の潤いやハリ(弾力性)を左右する成分は、加齢とともに失われていきます。通常のエイジングケアでは、それらを美容成分として含む美容液などの基礎化粧品で肌に補給します。一方、幹細胞培養液コスメの場合は、成分に含まれる成長因子が細胞自身に直接の作用をします。例えば、TGF(トランスフォーミング成長因子)はコラーゲンやエラスチンの構造を強化し、FGF(繊維芽細胞成長因子)はコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などの美容成分の分泌を促すことで、潤いやハリのある肌へと導いてくれます。
肌のくすみ予防
肌のくすみには、乾燥や摩擦、紫外線、血行不良などの原因があります。VEGF(血管内皮細胞成長因子)には新しい血管を形成し血流を増やし血行を良くする性質があるため、くすみの原因の1つ「血行不良」に働きかけ、明るく輝く肌に導いてくれます。
以上のような性質を持つことが、幹細胞培養液コスメがエイジングケアに期待されている理由なのです。
このように、幹細胞培養液コスメは、他のタイプのエイジングケアコスメとは違った形で肌へのアプローチをします。幹細胞培養液コスメとは違ったエイジングケアへのアプローチにご興味のある方は、こちらのコラム(お肌のはなし ~エイジングケアについて~)も、是非ご参考ください。
幹細胞培養液コスメを正しく選ぶポイント
ここまでの説明で、幹細胞培養液コスメがエイジングケアに大きく期待できることがわかってきました。
ここでは、幹細胞培養液コスメを選ぶ際のポイントを解説していきます。
〔幹細胞培養液コスメを正しく選ぶポイント〕
使われている幹細胞培養液の由来を確認する(ヒト幹細胞由来?植物幹細胞由来?動物幹細胞由来?)
使われている幹細胞の採取箇所を確認する(脂肪から?歯髄から?臍帯血から?)
コスメの成分として使われる幹細胞培養液は、大きく分けて以下の3種類です。
- 1)ヒト由来
- 2)植物由来
- 3)動物由来
1)ヒト由来の幹細胞培養液コスメの特徴
ヒトから採取した幹細胞を培養したヒト幹細胞培養液を成分に含むコスメです。植物由来、動物由来と比べ、人の体との親和性が高いためアレルギーなどが起きにくい特徴があります。また、ヒトの細胞表面には、レセプターと呼ばれるカギ穴のようなものがあり、このカギ穴にピッタリと合うカギ(リガンド)が結びつくことで、細胞の活性化が始まります。ヒト幹細胞培養液は、そのカギとなる生理活性物質(サイトカイン)や成長因子(グロースファクター)を豊富に含んでいます。これらの成長因子などが持つ性質が、「ターンオーバーの正常化」「肌の潤いやハリ(弾力性)のサポート」「肌のくすみ予防」へと導びいてくれるのです。
また幹細胞にも採取箇所によっても違いがあり、皮下脂肪などから採取する脂肪由来、歯の神経などから採取する歯髄由来、へその緒に含まれる臍帯血由来といったタイプに分かれます。その中でも臍帯血由来のものは、ステムセルエイジング(幹細胞の加齢による変化)が進んでいないため、培養する幹細胞そのものが若く、培養液内に含まれる成長因子などの有用成分が豊富であるという特徴があります。
2)植物由来の幹細胞培養液コスメの特徴
植物由来の幹細胞培養液は、リンゴ幹細胞やアルガン幹細胞、カミツレ幹細胞由来のものなどが代表的で、抗酸化作用や保湿作用などが期待できます。人間が拒絶反応を起こすことは少ないとされるものの、ヒト由来のものよりは、アレルギー反応が出やすい心配があります。
また、ヒト由来の幹細胞培養液コスメの特長で説明した「カギとカギ穴の仕組み」は動物特有の情報伝達であり、植物の場合はまったく仕組みが異なります。このため、ヒトの細胞にあるカギ穴(レセプター)にピッタリと合ったカギとなるような成分は植物由来の幹細胞培養液に含まれてはいないため、ヒトの細胞に対しどのような働きをするのか明らかでない点も多く残されています。
3)動物由来の幹細胞培養液コスメの特徴
動物から採取された幹細胞を培養した幹細胞培養液コスメです。ヒトの皮膚幹細胞と構造が似ている羊や豚、馬などの幹細胞を用いていますが、アレルギーの発症リスクや飼育過程での衛生面などといった安全性の問題があり、日本では流通していません。
使用時の留意点
使用時の留意点としては、まず洗顔で肌をしっかりとキレイにしてから使用するようにすること。また、使用する頻度や1回での使用量などは、必ず商品の使用説明書に従うようにしましょう。大きな効果が期待できそうだと言って、使用説明書での推奨を超える過剰な量を使用することは控えるようにしましょう。
相乗効果が期待できるスキンケア法
幹細胞培養液コスメは、「肌断食」「美容断食」といったシンプルなスキンケア法との相性が良いようです。これらのスキンケアでは、クレンジングでしっかりとメイク汚れや皮脂汚れなどを取り除き、一日の一定の時間(就寝時など)肌の上に化粧品などが何も乗っていない「肌が完全に開放された状態の時間」をあえて作り出します。この「肌が完全に開放された時間」が、肌本来の力を呼び起こし、不活性になっていた肌のターンオーバー(肌の代謝)の正常化を助けてくれます。こうしたターンオーバーを助ける肌環境づくりが、幹細胞培養液コスメに含まれるEGF成長因子の持つ作用「ターンオーバーを促す働き」とぴったりとフィットすることが、幹細胞培養液コスメと「肌断食」「美容断食」といったスキンケア法との相性が良い理由なのかもしれません。
ここまでご覧いただき、ご理解が深まりましたでしょうか?
幹細胞培養液コスメと言っても、ヒト幹細胞由来のものから植物幹細胞由来のものまで、また幹細胞の部位も臍帯血由来から脂肪由来までさまざまなタイプがあり、それぞれに特徴があることがお分かりいただけたと思います。
今後、ご自身にあった幹細胞培養液コスメを探す際には、本ページでの情報を是非ご参考ください。